2012年8月6日月曜日

【帰国者体験談】第一回 「シンガポールの12年」

第一回 「今打ち込むものがあるのも家族との海外生活体験があったから。
       人生は積み重ね、いつも前向きに生活をすることが次の生活を活かしてくれます。」 
                      -元シンガポール補習校校長 高橋みどり様

帰国倶楽部では、毎回海外よりもどられた方々をお招きし、体験談をお伺いしております。
第一回は、シンガポールに通算12年滞在され、帰国後も海外生活を支援する組織である「mint(ミント)」を主宰されている高橋みどり様より、駐在員の奥様として、二児の母親として、教育者としてみた海外生活と帰国までの体験談をお話いただきました。

 高橋みどり様
目次

1.シンガポール補習校
2.海外生活と子供の教育
3.常に帰国を意識して準備は早めに
4.しっかりとした日本語教育を
5.シンガポールの生活があって今の自分がある




「まずはプロフィールをお願いいたします。お生まれは東京ですね」

高橋:はい、東京生まれ、東京育ちで大学も東京でした。 もともと、教育者になりたかったこともあり卒業後、経済研究所を経てから、小学生から大学受験まで対象の進学塾を始めて15年間運営経営に携わっていました。その後主人が海外勤務となりシンガポールに1996年から通算12年間滞在しました。


1.シンガポール補習校
「シンガポールでは補習校の校長先生をされていたと聞きました」
高橋:縁あって1997年から8年間校長を務めさせて頂きました。
当時は、児童生徒数90人弱で学校組織としてもまだ不十分な学校でしたが、運営委員会、教員たちの情熱と協力があって私が帰国離任するときには270人の生徒を抱える大規模補習校に発展しました。教員の採用から、カリキュラム作成、クラス編成など学校を創り上げる苦労はありましたが、素晴らしい思い出と経験ができたと関係者や家族に今も感謝しています。学校の組織作りには、日本での仕事経験がたいへん役に立ちました。



2.海外生活と子供の教育
「シンガポールには、ご家族で行かれたとのことですが、迷いはなかったのですか」
高橋:
私にとって家族は、どこでも一緒にというのが基本ですので、子供たちの教育ができ、治安が良いところなら、世界中どこでも行ったと思います。 ただ、私もそうでしたが、最近では、奥様が仕事をお持ちのケースも増えており、仕事を続けるかで、迷われることもあるとは思います。


「初めて海外に行かれる時は、出発前に、何か準備をされたのですか」
高橋:
JALさんのセミナーには参加しました。当時は、海外の情報はあまりなく、不安はいっぱいありました。 ただ現代は、情報がありすぎて悩んでしまう方も多いように思います。 情報も限られた時代でしたので、「心配しても仕方がない、なんとかなる。」と思って現地に行きました。


「高橋さんは、家族を大切にされ、お子様の教育に熱心な方とお見受けいたしますが、海外での教育には、ご苦労もあったのでは」
高橋:
息子と娘の二人の子供がおります。 娘は、幼稚園からシンガポールの現地幼稚園でしたが、小学校は、日本人学校に入りました。また5年生、6年生の二年間は、シンガポールのアメリカンスクールに通わせました。6年の途中で、私と娘は中学受験のため一旦日本に帰りましたが、主人の帰国が延期になったので、日本で中学に入学後、一年間休学し、再びシンガポールのアメリカンスクールに戻りました。 アメリカンスクールでは、思っていた以上に細やかで、子供一人一人の個性や才能を尊重する教育を受けさせていただきました。



「息子さんの方はいかがですか」
高橋:
息子の方が年上ですが、日本に居た時から主人の仕事柄、将来海外に行くかもしれないと考えて、日本での幼稚園はインターナショナルスクールに通わせました。 シンガポールでは、日本人小学校5年生に転入いたしました。ただせっかく海外に暮らすのですから現地の方々と交わりを持たせたいと考えていました。ちょうど息子がスポーツ、特に水泳が好きでしたので、スクールを色々探しました。結局国立のオリンピック選手を養成するようなチームに入れて頂くことができました。
練習はたいへんでしたが、私も息子も現地の家族との交わりが増えて、家族でポットラックパーティーに参加したり楽しかったです。中学二年まで日本人学校だったのですが、高校では水泳をさらに続けたかったのと、オーストラリアに永住権を取って暮らしている両親の勧めで、シドニーの私立の男子高校に進学しました。 入学前にいくらか英語などの勉強準備はさせましたが、異国で寮に入り一人英語で教育を受け、レベルの高い水泳訓練に励むことは、ハードではじめの一年はかなり苦労をしたようです。
大学は、帰国子女受験で日本の大学に進学して、現在は社会人となり海外営業の仕事に就いています。


「お子様たちもいろいろな経験を積まれたのですね」
高橋:
最近、子供たちと話すのですが、「よく『帰国子女はいいね。』と言われることがあるけれど、海外で皆それぞれ様々な苦労はしている。ただ、慣れると馴染むのは早かったね。」と。
現地では、長いこと子供ながらに毎日緊張して学校にも通っていたそうです。 ただ、その苦労が現在の仕事や勉強に役立っていると、息子も娘もしみじみと言っています。


「高橋さんもいろいろと取組まれたのですか」
高橋:
せっかく、海外に家族で居住する機会があるのであれば、その国でできることを、前向きに取組んでみたらと思います。私の場合は、料理が好きだったので、シンガポールの中華料理をはじめ、タイ、インド、韓国、イタリア料理などを各国の先生に習いました。 また、そのおかげで、いろいろな方と知り合うことができました。 子供を通じての現地の方や異国の方とのつきあいも広がったと思います。 海外駐在員の奥様は、異国の生活で不自由なことはあるかもしれませんが、テニス、水泳などのスポーツ、語学、料理、楽器、フラワーアレンジなどのカルチャースクールに通ったり、ボランテイアに参加するのもいいのでは。 これから海外に行かれる方は、「なんで海外生活をおくらねばならないのか」ではなく、「せっかくの機会なので、人生の貴重な体験として活かすと」というプラス思考をもってください。その国を楽しむぐらいでいると、他のことも良くなってくる。もちろん、子供たちにも良い影響を与えてくれるはずです。



3.常に帰国を意識して準備は早めに
「そして、ついに帰国ということになるのですが、帰国に際してはどう思いましたか」
高橋:
私の場合、主人の帰国が伸びたので、正直なところ子供の受験がなければシンガポールにまだ残っていたと思います。異国での生活がとても充実していたからです。ご婦人方で帰国前に「できれば残りたい」と思う方は多いと思います。やはり、住めば都ですね。


「お子様の帰国受験のために準備はされていたのですか」
高橋:
夏休みに一時帰国して学校の説明会に参加したり、必要書類準備も含め早めに行動しました。もし帰国子女受験をされるのであれば、早めに情報を入れて目標をたてておくべきでしょう。夫の帰任は、学校と連動していませんので、常に帰国を意識して準備されることをお勧めいたします。あらゆることに言えますが、準備をすることが安心感につながっていきます。


「最近は、一時帰国もできるので浦島太郎の方はいらっしゃらないとは思いますが、それでも東京などは、街自体が目まぐるしく変わっている。子供たちにとっては、日本が外国となっているので不安だったでしょうね。」
高橋:
その変化にどうやって対応するのか、最近では帰国子女も多くなって、以前と比べれば受入れ環境も良くなっていますが、やはり親も子も帰ってから落ち着くまでに時間がかかるのは仕方がないですね。 私たちも、生活が落ち着くまでに、3か月はかかりました。 日本人の生活や流行が出国まえと随分変わっているな、ということは、落ち着いてからあらためて気づきましたね。 一方、日本の暮らしが落ち着くと、海外での生活が無性に懐かしくなるものです。


「帰国されて、日本を見る目は変わりましたか」
高橋:
文化の異なるところで暮らしてみて、物の見方に変化が感じられました。日本人ですが日本の国を第三者的に見ることができるようになり、日本の良い面を新たに認識できました。常夏のシンガポールに住んでみて、日本の四季にもあらためて感動しました。子供たちも日本の学校に進学して日本人の友達ができると「やっぱり自分は日本人だ。」と実感したようですし、反面、自分たちは帰国子女と思う事もあったようです。 学校での日本の教育、友達の育った文化が自分とは違うと感じることが度々あったようです。


「帰国後のお住まいについても海外にいらっしゃる間に、準備されたのですか」
高橋:
まだ帰国の時期がわからないときから、帰るときの準備をしはじめました。 私の場合は第一に教育でしたが、家のことも考えました。 たまたま、シンガポールで開催された日本のハウスメーカーの住まいの相談会に参加したのが直接のきっかけです。 海外に住んだ経験があるとその国のエッセンスが入った家を建てたくなるものですね。 海外で買い集めたタイルや木彫りの欄間などを設置してもらい、東南アジア風に仕上げてもらいました。




4.しっかりとした日本語教育を
「これから海外に行かれる方々へ、特にお子様の教育についてアドバイスすることはありますか」
高橋:
世界的な傾向でしょうか、最近現地校やインター校に子供を通わせるご家庭が増えています。私は、シンガポールの補習校で、日本語も英語も中途半端になって苦しんでいる子供達や海外での教育に悩んでおられるご両親に長く関わってきました。 特に幼少期は、まずは日本語の基礎をしっかり身に着けることが大切ということ、をこれから海外に行かれるご家族にお伝えしたかった私が、「海外生活と教育のサポートmint(ミント)」を始めた理由の一つもそこにあります。母語の基礎が身についていれば、それを土台に第2言語をしっかりと習得できるし、バイリンガル、バイカルチュラルな子供に育てることも夢ではありません。日本人学校や補習校がない地域でも、ご両親が日本語環境を与えてあげることや家庭内で日本語を教えることもできます。海外で充実した教育を受けさせることができるかどうかは、ご両親の心構えしだい、ということを知って頂きたいです。



5.シンガポールの生活があって今の自分がある
「いろいろとお話しをいただきましたが、高橋さんにとっての海外生活とは、またこれから海外に行かれる方へのアドバイスがあればお願いします」
高橋:
第二の故郷でもあるシンガポールでの生活は、自分の人生の貴重な期間(ピリオド)であったし、私の人生に深みを与え、帰国後の生活に大きな影響を与えてくれました。
「どこに在っても、今自分ができることを前向きな気持ちで取り組むこと。」「早めに次のことを考えて準備すること。」そうすればより充実した海外生活を送れますので、ぜひそうして頂きたいと思います。


「本日は有難うございました」

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